親の施設入居や相続をきっかけに、実家が空き家になったままになっている方も多いのではないでしょうか。「今すぐ売る予定はない」「思い出があって手放せない」「兄弟と意見がまとまらない」——こうした理由で放置してしまうケースは少なくありません。
この記事では、空き家を放置するとどうなるのか、考えられるリスクと対処法を解説します
この記事の結論
空き家を放置すると、建物の老朽化・固定資産税の増加・防犯リスク・近隣トラブル・特定空家指定といった問題が時間とともに積み重なります。 利用予定がない場合は早めに方針を決めることが、経済的損失とリスクを最小化する最善策です。
なぜ空き家を放置してしまうのか
空き家が発生する原因の半数以上は相続によるものとされています。国土交通省によると、2023年時点で全国の空き家数は約900万戸を超えており、空き家率は過去最高水準で推移しています。
放置されやすい背景には、以下のような事情があります。
実家をどうするか決められない
売る・貸す・残す・解体するといった選択肢はあるものの、どれが正解か分からないまま時間が過ぎてしまうケースがよくあります。特に不動産の処分は金額も大きく、「決断を誤りたくない」という慎重さが先延ばしにつながることも。
思い出があり手放せない
生まれ育った家や、親と過ごした場所には特別な感情があります。「もったいない」「いつかまた使うかもしれない」という気持ちが、合理的な判断を難しくします。
兄弟と意見がまとまらない
相続人が複数いる場合、全員の同意がなければ売却や解体は進められません。特に「残したい派」と「手放したい派」が存在すると、話し合いが長期化しやすくなります。
相続手続きが終わっていない
相続登記が未完了の状態では、不動産の処分や売却ができません。手続きを後回しにしているうちに、空き家状態が続いてしまうケースも見られます。2024年4月から相続登記は義務化されており、相続を知った日から3年以内の手続きが必要です。
忙しくて対応できない
仕事や子育てで手が回らない、実家が遠方で頻繁に通えないなど、物理的な制約から管理が後回しになることも少なくありません。
空き家を放置するとどうなるのか
「特に問題が起きていないから大丈夫」と思っていても、空き家のリスクは時間とともに確実に大きくなります。
建物の老朽化が進む
人が住まなくなった家は、換気が行われないことで湿気がこもり、木材が腐食しやすくなります。雨漏りを放置すれば柱や床材にまでダメージが及び、シロアリが発生することもあります。台風や地震の際には外壁・屋根材の落下、最悪の場合は倒壊リスクも生じます。
倒壊した建物が隣家や通行人に被害を与えた場合、所有者が損害賠償責任を負う可能性があります。「気づいたら取り返しのつかない状態になっていた」というケースは珍しくありません。
固定資産税や維持費がかかり続ける
誰も住んでいなくても、固定資産税・都市計画税は毎年発生します。さらに、後述する「特定空家」に指定され、自治体から勧告を受けると、住宅用地として適用されていた固定資産税の軽減措置が外れ、税額が最大6倍になる可能性があります。
水道・電気の基本料金、火災保険料なども継続してかかるため、活用していない建物のために出費だけが積み重なる状態が続きます。
庭木や雑草が伸びて近隣トラブルになる
管理されない庭では雑草が繁茂し、隣地や道路にはみ出すと近隣住民からのクレームに発展します。害虫・害獣が発生して衛生上の問題になるケースもあります。庭木の枝が越境した場合、法的には所有者が対処する責任があります。
防犯リスクが高まる
人の出入りがない家は犯罪者に目をつけられやすく、不法侵入・不法投棄・放火といったリスクが高まります。空き巣や不法占拠が実際に起きても、長期間気づかないというケースもあります。
売却しづらくなる可能性がある
建物の状態が悪化するほど、買い手がつきにくくなります。「いざ売ろう」と決断したときに、修繕費用が高額になっていたり、解体が必要な状況になっていたりすることもあります。放置期間が長いほど、選択肢が狭まるリスクがあります。
「特定空家」「管理不全空家」に指定されるリスク
2023年の空家法改正により、管理が不十分な空き家への対応が強化されました。
- 管理不全空家:適切に管理されておらず、このまま放置すれば特定空家になるおそれがある状態
- 特定空家:倒壊の危険・衛生上の問題・景観上の問題があると自治体に認定された空き家
特定空家に指定されると、自治体から「助言・指導→勧告→命令」と段階的な行政処置が実施されます。命令に従わない場合は50万円以下の罰金が科せられるほか、最終的には自治体による強制解体も可能となっています。
放置せずに取れる選択肢
空き家の対処法は主に4つあります。自分の状況に合ったものを選ぶことが大切です。
売却する
空き家を手放す最もシンプルな方法です。売却すれば固定資産税や管理の手間から解放され、まとまった現金を得ることができます。
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メリット
維持費・管理負担がなくなる。まとまった資金を得られる。空き家リスクを根本から解消できる。
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デメリット
思い出の実家を手放す心理的な負担がある。相続人全員の同意が必要。売却価格は建物の状態によって変動する。
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ポイント
建物の状態が悪いほど売却価格に影響するため、決断が早いほど有利です。
管理を続ける
将来的に誰かが利用する可能性がある場合は、定期的な管理を続けながら方針を検討する時間を作ることも一つの選択肢です。
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メリット
いつでも実家に戻れる安心感がある。方針を焦らず検討できる。
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デメリット
固定資産税・火災保険料・水道基本料金などの維持費が発生し続ける。遠方の場合は管理が難しい。老朽化は止められない。
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ポイント
管理を続ける場合は、自分で行うか空き家管理サービス(専門業者への委託)を利用するかを検討しましょう。月額数千円〜1万円台で定期巡回・換気・郵便物確認などを代行してもらえるサービスがあります。
賃貸として活用する
建物の状態が良ければ、賃貸に出して収益化する方法もあります。
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メリット
家賃収入が得られる。入居者がいることで建物の管理状態が保たれる。将来的に売却や居住への変更もできる。
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デメリット
リフォーム費用がかかる場合がある。入居者トラブルや退去後の原状回復費用のリスクがある。管理会社への手数料(賃料の5〜10%程度)が発生する。
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ポイント
築年数が古い物件や状態が悪い物件は、賃貸需要が低く活用が難しいケースもあります。不動産会社に相談してニーズを確認してから進めることをおすすめします。
解体する
老朽化が著しい場合や、土地の活用を優先したい場合には解体も有効な選択肢です。
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メリット
倒壊リスクや防犯上の問題を解消できる。更地にすることで土地の活用・売却がしやすくなるケースがある。管理の手間がなくなる。
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デメリット
木造住宅の場合、30坪で100万円前後の解体費用がかかる。更地にすると固定資産税の住宅用地特例が外れ、税額が上がるケースがあるため、解体前に試算が必要。
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ポイント
解体後の土地活用(駐車場・売却など)も含めて総合的に判断することが重要です。
空き家になったら最初にやること
「すぐには決められない」という場合でも、以下の5つは早めに確認しておきましょう。
名義を確認する
相続登記が完了していない場合、売却・賃貸・解体のいずれも進められません。まず不動産の名義が誰になっているかを確認し、未完了の場合は速やかに手続きを進めましょう。
建物状態を確認する
現地を訪問して、雨漏り・外壁の損傷・シロアリ被害・ブロック塀の傾きなどがないか確認します。気になる箇所があれば、業者に点検を依頼して状態を把握しておくと、後の判断がしやすくなります。
維持費を把握する
固定資産税・火災保険料・水道光熱費の基本料金など、現状でどれくらいの費用がかかっているかを整理しましょう。「維持するコスト」を数字で把握することで、売却・活用の判断がしやすくなります。
家族で方針を話し合う
相続人が複数いる場合は、全員で現状を共有し、今後の方針について話し合う場を設けましょう。話し合いの結果はメモや記録に残しておくと、後からのトラブルを防げます。「まだ決められない」という場合でも、「いつ頃までに結論を出すか」だけでも決めておくことで、放置の長期化を防ぎやすくなります。
売却価格の目安を確認する
「売るつもりはない」という段階でも、不動産会社に査定を依頼して現在の売却価格の目安を把握しておくことをおすすめします。建物の状態・立地・市場動向によって価格は変わるため、「今ならいくらで売れるか」を知っておくことで、判断の選択肢が広がります。
実際に解決したケース
実家の片付けは、家族の状況や今後の方針によって進め方が異なります。大切なのは、荷物を処分することだけを急ぐのではなく、実家を今後どうするかも含めて整理することです。次の表を参考に、ご自身の状況に合った進め方を確認してみましょう。
施設入居後に空き家になったケース
売却
母親が介護施設に入居したことで実家が空き家になったAさんのケース。「いつか母が戻るかもしれない」と3年間管理しながら様子を見ていましたが、維持費や管理の手間が重なり、不動産会社に相談。査定の結果、思ったよりも高い価格での売却が可能とわかり、相続人の兄弟と話し合いのうえ売却を決断。固定資産税や管理費から解放されました。
相続後に数年間放置したケース
相続
父親が亡くなった後、相続人3人の間で意見がまとまらず5年間放置していたBさんのケース。その間に外壁の一部が傷み、修繕費用の見積もりが高額になってしまい、買い手もつきにくい状態に。最終的には解体して更地売却を選びましたが、早期に動いていれば建物付きでの売却も可能だったと後悔したそうです。
賃貸として活用したケース
管理継続
築25年の実家が空き家になったCさんのケース。立地が駅近で状態も良かったため、100万円程度のリフォームを経て賃貸に出すことに。毎月安定した家賃収入が得られるようになり、将来的な売却の選択肢も残した形で活用できています。
このケースならどうする?
実家を今後どうするべきかは、住む予定の有無や建物の状態、管理できる距離にあるかによって異なります。大切なのは、何となく空き家のままにするのではなく、将来の予定や管理負担を踏まえて方針を決めることです。次の表を参考に、ご自身の状況に合った対応を確認してみましょう。
| 状況 | おすすめの対応 |
|---|---|
| 誰も住む予定がない | 売却を早めに検討 |
| 遠方に住んでいる | 売却優先、または管理サービスを活用 |
| 将来利用予定がある | 定期管理を続けながら検討 |
| 建物状態が良い | 賃貸活用も選択肢に |
| 築年数が古い・老朽化が進んでいる | 解体を含めて検討 |
| 兄弟で意見が割れている | まず方針整理・話し合いから |
よくある質問
空き家は何年くらい放置すると危険ですか?
明確な年数の基準はありませんが、一般的に10年以上人が住まない状態が続くと老朽化が著しく進み、倒壊リスクが高まるといわれています。ただし、建物の構造・立地・気候によって劣化スピードは異なります。築年数が古い木造住宅では、数年でシロアリ被害や雨漏りが進行するケースもあります。
誰も住んでいなくても固定資産税はかかりますか?
かかります。固定資産税は建物・土地の所有者に毎年課税されます。さらに「特定空家」の指定を受けて勧告に至った場合は、住宅用地の固定資産税軽減措置が外れ、税額が最大6倍になるケースがあります。
売却するか決めていなくても管理は必要ですか?
必要です。管理を怠ると建物の傷みが早まり、近隣トラブルや「特定空家」指定のリスクが高まります。少なくとも月1回程度の換気・庭の手入れ・郵便物の確認は行いましょう。自分で対応が難しい場合は、空き家管理サービスの利用を検討してください。
遠方の場合はどうすればいいですか?
まずは信頼できる不動産会社や空き家管理サービスに相談することをおすすめします。管理代行サービスは月額数千円〜1万円台で定期的な巡回・換気・外観チェックを行ってくれます。また、自治体の空き家相談窓口でも情報提供や紹介を受けられる場合があります。
まとめ:「とりあえず」が一番リスクになる
空き家を放置すると、建物の老朽化・固定資産税の増加・防犯リスク・近隣トラブル・特定空家指定といった問題が重なり、時間が経つほど選択肢が狭まっていきます。
「今は何も決めなくていい」ではなく、まず現状を把握し、家族で方針を共有することが最初の一歩です。
売却するかどうかまだ決まっていなくても、無料査定や相談窓口を活用して「今の実家の状況と選択肢」を整理するだけでも、大きく前進します。

