親から実家を相続したものの、自分はすでに持ち家があり、兄弟も住む予定がない——このケースは現代の相続において非常に多くなっています。「とりあえず放置」という選択をとる方も多いですが、これが後々大きなコストとリスクを生むことをご存知でしょうか。
この記事では、相続した実家に誰も住まない場合の選択肢と、放置した場合に起こるリスクをわかりやすく解説します。
この記事の結論
誰も住まない相続した実家は「売却」「賃貸活用」「管理継続」「解体・土地活用」の4択です。将来的な利用予定がない場合は、早めに方針を決めることが経済的な損失を防ぐ最善策です。
なぜ相続した実家が空き家になるのか
相続した実家に誰も住まず、そのまま空き家になってしまうケースは少なくありません。子ども世代の生活拠点や仕事、家族構成の変化などにより、「実家に戻る」という選択が現実的ではない家庭が増えているためです。まずは、相続した実家が空き家になりやすい主な理由を見ていきましょう。
子ども世代がすでに別居・持ち家を持っている
かつては「実家を誰かが引き継ぐ」という文化がありましたが、現代では子ども世代がすでに自分の家を持ち、仕事や学校の都合で別の場所に生活拠点を構えているケースがほとんどです。相続しても「住む人がいない」という状況になりやすくなっています。
仕事や家庭の都合で戻れない
「地元に戻りたい気持ちはあるが、子どもの学校や自分のキャリアを考えると現実的に難しい」というジレンマを抱える方は多くいます。「いつか戻るかもしれない」という期待だけで実家を保有し続けると、維持費だけが積み重なるリスクがあります。
兄弟も利用予定がない
相続人が複数いる場合、誰一人として住む意志がないのに「売却はしたくない」という感情的な理由だけで保有が続くケースも少なくありません。
地方にあり需要が少ない
特に地方・郊外の実家は、不動産需要が低く「売ろうにも売れない」という状況になりやすいです。ただし「古い家だから売れない」という思い込みが先行しているケースも多く、実際に査定を受けてみると意外な価格がつくことがあります。
放置するとどうなるのか
相続した実家を「とりあえずそのまま」にしていると、時間の経過とともに負担やリスクが大きくなります。税金や維持費がかかり続けるだけでなく、建物の老朽化や損害賠償、相続登記の問題につながる可能性もあります。放置によってどのような影響があるのか、あらかじめ確認しておきましょう。
固定資産税が発生し続ける
誰も住んでいなくても、不動産を所有している限り固定資産税・都市計画税は毎年課税されます。建物がある土地には「住宅用地の特例」(固定資産税を最大1/6に軽減)が適用されていますが、空き家を放置して「特定空家」に指定された場合はこの特例が解除され、税額が最大6倍になる可能性があります。
建物の老朽化が進む
人が住まない家は換気・通水・清掃が止まるため、急速に劣化します。カビ・腐食・シロアリ・雨漏りが進行し、修繕費が膨らみます。劣化が進むほど売却価格も下落し、「気づいたときには二束三文にしか売れない」という状況になることも。
損害賠償リスクが発生する
民法上、建物の管理義務は所有者にあります(無過失責任)。空き家が老朽化して倒壊し、近隣に損害を与えた場合は所有者が賠償責任を負います。日本住宅総合センターの試算によると、空き家の倒壊によって人を死亡させた場合の損害賠償額は2億円を超える可能性があります。
売却しにくくなる可能性がある
2023年の空家法改正により「管理不全空き家」という新カテゴリーが設けられ、特定空家の指定を受けていなくても管理が不十分であれば固定資産税の特例が外れる可能性があります。また行政代執行(強制取り壊し)が実施された場合、その費用は所有者に請求されます。
相続登記の義務違反になる可能性がある
2024年4月から相続登記が義務化されました。相続を知った日から3年以内に登記しなければ、10万円以下の過料の対象になります。「とりあえず放置」は法的なリスクも伴います。
考えられる解決策
相続した実家に誰も住まない場合でも、解決策は売却だけではありません。建物の状態や立地、将来の利用予定によっては、賃貸や管理継続、解体なども選択肢になります。それぞれのメリット・デメリットを比較し、自分たちの状況に合った方法を検討しましょう。
売却する
誰も住む予定がない。遠方で管理できない。相続人が複数いて現金分割したい場合
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メリット
維持費・固定資産税から完全に解放される。まとまった現金が得られ、相続人が複数の場合は分けやすい。管理の心理的負担がなくなる。
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デメリット
思い出の家を手放すことになる。売却まで時間がかかる場合がある。仲介手数料(売却価格×3%+6万円・税別)などの諸費用が発生する。
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売却方法の比較
方法 特徴 向いているケース 仲介売却 相場に近い価格。売却まで数ヶ月 建物状態が良い。時間に余裕がある 不動産会社への直接買取 相場の7〜8割程度だが早く売れる 早急に手放したい。老朽化が著しい 空き家バンク 地方・郊外向け。自治体が運営 通常の不動産市場で売れにくい地方物件 -
税制上のポイント
相続した空き家を売却する際は「空き家3,000万円特別控除」が使える場合があります(適用期限2027年12月末・旧耐震基準の家屋等が対象)。また相続発生後3年以内の売却なら「取得費加算特例」が使える場合もあります。売却前に税理士に相談することをお勧めします。
賃貸として活用する
交通利便性が高いエリア。建物の状態が比較的良好。3〜5年後に子どもが住む予定があり、それまで貸す場合
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メリット
家賃収入が維持費をカバーできる。実家を手放さずに済む。入居者が住むことで建物の劣化を防げる。
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デメリット
リフォーム費用が発生する場合がある。空室リスク・入居者トラブルへの対応が必要。賃貸管理会社への委託費(家賃の5〜10%)が発生する。賃貸に出すと空き家3,000万円特別控除が使えなくなる点に注意が必要。
管理を続ける
近い将来(1〜3年以内)に誰かが住む具体的な計画があったり、近隣に住む家族が定期管理できる場合
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メリット
将来の選択肢を残せる。すぐに決断する必要がない。
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デメリット
年間20〜40万円以上の維持費が発生し続ける。建物の劣化リスクが続く。「いつか決める」が「ずっと放置」になりやすい。
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管理継続の場合の注意点
「いつまで管理を続けるか」の期限を決めておく。最低月1回の換気・通水・清掃を行う。維持費の年間コストを全員で把握・共有する。
解体して土地活用する
建物の老朽化が著しく旧耐震基準の物件や建物付きでの売却が難しいエリアの場合
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メリット
老朽化した建物のリスク(倒壊・損害賠償)から解放される。更地として売却しやすくなる場合がある。駐車場・資材置き場などの活用ができる。
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デメリット
解体費用が発生する(木造住宅で1坪3〜5万円・30坪で90〜150万円が目安)。更地にすると住宅用地の特例が外れ、固定資産税が最大6倍になる可能性がある。
相続土地国庫帰属法を利用する(最終手段)
2023年4月に施行された「相続土地国庫帰属法」により、一定の条件を満たす土地は国に返納できるようになりました。
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条件
相続によって取得した土地で、建物がない更地であること。抵当権の設定がなく、権利関係に争いがないこと。
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費用
審査手数料(1万4,000円)+10年分の土地管理費(面積に応じて20万〜100万円超)
まず確認したい5つのポイント
遠方の実家をどうするか判断する前に、まずは現状を整理することが大切です。名義や相続状況、維持費、将来の活用予定などを確認しておくことで、「残すべきか」「売却すべきか」を客観的に判断しやすくなります。まずは、次の5つのポイントをチェックしてみましょう。
誰が所有者なのか
法務局またはオンラインで登記事項証明書を取得し、現在の名義人を確認します。相続が発生している場合、相続登記が完了していなければ売却できません。2024年4月から相続登記が義務化されており、3年以内の登記が必要です。
相続手続きは完了しているか
相続人全員の合意(遺産分割協議)と相続登記が完了しているかを確認します。未完了の場合は司法書士に早めに相談しましょう。
年間維持費はいくらか
固定資産税の納税通知書で税額を確認し、火災保険料・管理費・交通費を合算します。「維持費の年間合計×10年」を試算すると、売却と比較した際のコスト感が見えてきます。
将来住む予定はあるか
「誰が・いつ・どんな理由で」住むかを具体的に家族で確認します。「いつか誰かが住むかもしれない」という曖昧な理由では、維持費を垂れ流し続けることになります。
売却できそうな立地か
オンラインの不動産一括査定サービスを使えば、現地に行かずに複数社から査定額を得られます。「いくらで売れるか」を把握してから方針を決めることで、管理継続と売却のどちらが経済的に合理的かが判断できます。
実際に解決したケース
相続した実家をどうするかは、家族の状況や建物の立地、将来の予定によって異なります。すぐに売却するケースもあれば、一定期間保有したうえで判断したり、賃貸として活用したりするケースもあります。ここでは、実際にそれぞれの方法で実家問題を解決した事例を紹介します。
相続後すぐに売却したケース
相続
売却
父親が亡くなり3人兄弟がそれぞれ持ち家を持っているAさん(50代)のケース。「誰も住まないなら早く決着をつけよう」と全員が合意し、相続登記完了後すぐに3社に査定を依頼。仲介売却を選択し、相続後6ヶ月以内に売却が完了。固定資産税と維持費の負担もなくなり、売却代金を3人で均等分割。「想像よりスムーズだった」という感想が残りました。
一時的に保有して後に売却したケース
管理継続
売却
母親が亡くなったBさん(40代)のケース。「まだ手放す気持ちになれない」という気持ちから1年間管理を継続。この間に「誰もが実際に住む予定がない」という現実を受け入れる時間を確保しました。2年目に家族会議を開き、3社に査定を依頼して売却を決断。空き家期間が比較的短かったため、建物状態が保たれており現状渡しで売却できました。
賃貸として活用したケース
相続
管理継続
駅から徒歩5分の立地の実家を相続したCさん(50代)のケース。不動産会社から「賃貸需要が高いエリア」とのアドバイスを受け、水回りを中心に100万円のリフォームを行い定期借家契約(3年)で賃貸へ。毎月の家賃収入が維持費を大幅に上回る収支になりました。3年後は長男が帰郷して住む予定のため、売却せずに資産を維持できました。
このケースならどうする?
相続した実家への対応は、住む予定の有無や建物の状態、立地、家族の意向によって異なります。大切なのは、「とりあえず保有する」のではなく、管理負担や将来の活用予定を踏まえて方針を整理することです。次の表を参考に、ご自身の状況に合った対応を確認してみましょう。
| 状況 | おすすめの対応 |
|---|---|
| 誰も住む予定がない | 売却を優先検討(管理コストが高すぎる) |
| 遠方に住んでいる | まず査定を受けて早めに売却を検討 |
| 建物状態が良い・立地が良い | 賃貸活用も有力な選択肢 |
| 築50年以上・老朽化が著しい | 「建物付き売却」vs「解体後売却」を比較 |
| 将来利用予定がある | 期限付きで管理継続 |
| 兄弟で意見が割れている | 査定結果を全員で共有して方針整理 |
よくある質問
相続した実家はすぐ売った方がいいですか?
「すぐ売る必要がある」とは一概には言えませんが、住む予定がない場合は早く動くほど選択肢が広く、損失が少なくなります。相続した空き家の売却で使える「空き家3,000万円特別控除」には適用期限(2027年12月末)があり、「相続後3年以内」という期限要件もあります。検討が遅れると節税の機会を逃す可能性があります。まず不動産査定を受けて相場を把握することが、判断の第一歩です。
空き家のまま持ち続けるとどうなりますか?
「固定資産税の継続課税」「建物の老朽化と修繕費の発生」「損害賠償リスク(最大2億円超の試算あり)」「特定空家指定による税額最大6倍」という複数のリスクが同時に進行します。10年間の維持費は200〜400万円超になるケースも多く、建物の劣化によって売却価格も下落します。「とりあえず様子見」は最もコストがかかる選択です。
誰も住まない場合でも管理は必要ですか?
必要です。 空き家であっても所有者には管理義務があり、管理が不十分な場合は「管理不全空き家」に指定されて固定資産税の特例が失われる可能性があります。最低でも月1回の換気・通水・外観確認が推奨されています。自分で管理できない場合は空き家管理サービス(月5,000〜10,000円程度)を活用しましょう。
売却する前に片付けは必要ですか?
必ずしも必要ではありません。 「現状渡し(残置物あり)」に対応した不動産会社や買取業者も多く存在します。特に急いで売却したい場合は、片付けを行わずに売却できる業者を探す方がコスト・時間の節約になります。貴重品(権利証・通帳・印鑑・保険証券)だけ事前に持ち出しておけば、あとは現状のままでも売却を進められるケースが多くあります。
まとめ:「放置」は最もコストがかかる選択肢
相続した実家に誰も住まない場合、最も避けるべき選択は「何もしないこと」です。放置している間も固定資産税・管理費・老朽化リスクは積み重なり続けます。
決断を助ける3ステップ
- 現状把握: 相続登記の状況・年間維持費・建物状態を確認する
- 査定を受ける: 複数社に無料査定を依頼し、「いくらで売れるか」を把握する
- 期限付きの方針決定: 相続人全員で「〇月までに決める」という合意をする
「まず査定だけでも受けてみる」という小さな一歩が、相続した実家問題を解決する最初のきっかけになります。

