「空き家特例(被相続人の居住用財産に係る譲渡所得3,000万円特別控除の特例)」とは、相続した空き家を一定の条件のもとで売却した際、売却益(譲渡所得)から最大3,000万円を控除できる税制上の特例です。
空き家特例(3000万円控除)とは
制度の概要
-
「空き家特例(被相続人の居住用財産に係る譲渡所得3,000万円特別控除の特例)」とは、相続した空き家を一定の条件のもとで売却した際、売却益(譲渡所得)から最大3,000万円を控除できる税制上の特例です。
-
通常、不動産を売却して利益が出ると所有期間が5年超の場合は約20%(所得税15%+住民税5%)の譲渡所得税が課税されます。この特例を使えば課税対象の利益を大幅に圧縮でき、場合によっては税金がゼロになる可能性もあります。
-
具体的な節税効果の例:
相続した実家を5,000万円で売却し、得た利益が3,500万円だったと仮定すると、課税対象の利益は500万円(3,500万円-特例3,000万円)となり、税負担を大幅に抑えることができます。
なぜ作られた制度なのか
-
全国に増え続ける空き家問題を解消するため、相続により空き家となった古い一戸建ての売却・解体を促進する目的で、平成28年(2016年)に創設されました。その後複数回の法改正を経て、利用しやすくなっています。
適用期限はいつまでか
-
2026年6月現在、令和9年12月31日(2027年末)までの売却が対象です。国税庁法令上の期限が延長されている可能性があるため官報で改めて確認したうえで、売却時期を計画してください。
主な適用条件
空き家特例は要件が細かく、すべてを満たす必要があります。主な理解ポイントを整理します。
相続した家であること
相続または遺贈により個人が取得した家屋であること(法人は対象外)
被相続人が独居していた家であること
前提条件として、相続開始の直前まで「一人暮らし」だったことが必要です。相続後に誰かが居住した場合は対象外となります。
建物が昭和56年5月31日以前に建築されたこと
1981年5月31日以前(旧耐震基準)に建てられた建物に限定されます。新耐震基準以降の建物は対象外です。
相続後に居住・賃貸の用に供していないこと
相続から売却までの間、建物を誰かに貸したり、自分や家族が居住したりしてはいけません。相続から売却まで空き家であり続けることが条件です。
売却時期が相続後3年以内であること
相続開始日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却を完了する必要があります。例えば、死亡日が2022年7月15日の場合、期限は2025年12月31日になります。
売却価格が1億円以下であること
建物・土地の合計売却価格が1億円を超える場合は適用外となります。共有者がいる場合はその合計金額で判定されます。
売却時の建物が一定の建築条件を満たすこと
建物を取り壊さずに売却する場合は、現行の耐震基準(1981年6月1日以降に建築確認を受けた建物)を満たす必要があります。対象の建物は1981年以前建築のため新耐震基準を満たすものは少なく、実務上は耐震改修または取り壊し(解体)して売却するのが一般的です。
2024年改正の重要ポイント
2024年1月1日以降の譲渡から、内容が大きく変わった点が2つあります。
買主による建物解体・耐震改修でもOKに
2023年までは、耐震改修または取り壊しは売主側での工事でなければなりませんでした。
2024年1月以降は、売買契約書に「譲渡日の属する年の翌年2月15日までに買主が耐震改修または取り壊しを行う」旨の条文があれば対象となります。
現状のまま建物を引き渡すケースでも対応できるようになり、不動産会社への買取依頼による売却でも特例が利用しやすくなりました。
相続人が3人以上の場合は控除限度が2,000万円に減額
- 相続人が2人以下:1人あたり3,000万円まで控除
- 相続人が3人以上:1人あたり2,000万円まで控除(減額)
兄弟姉妹が共同相続して売却する場合は、相続人数を必ず確認してください。
誰が対象になるのか
空き家の3,000万円特別控除は、相続した空き家を売却したすべての方が対象になるわけではありません。被相続人の居住状況や相続後の利用状況などに要件があるため、まずは自分が対象になる可能性があるか確認しておきましょう。
基本的な対象者
相続または遺贈によって空き家と敷地を取得した個人が対象です。法人は対象外です。
被相続人が一人暮らしだったケース
老人ホーム入居後に亡くなったケース
2019年4月以降、要介護認定等を受けて老人ホーム等に入居していた場合も、一定の要件を満たせば対象になります。
条件として、入居後にその家を貸したり、他の人が住んだりしていないことが必要です。老人ホームへの入居で実家が空き家になっているケースは、この要件を確認してみましょう。
過去の相続(義務化前)も対象
制度が創設された2016年4月以降の売却であれば対象です。過去に相続した実家でも、まだ売却していなければ特例を利用できる可能性があります。
特例を利用できない主なケース
空き家の3,000万円特別控除には細かな適用要件があり、下記条件に該当する場合は利用できません。特に相続後の利用状況や建築時期、売却時期には注意が必要です。
- 相続後に誰かが居住した・賃貸に出した
- 建物が1981年6月1日以降に建築されたもの(新耐震基準)
- 売却価格が1億円を超えた
- 相続から3年目の年末を過ぎた後の売却
- 建物をそのまま(耐震基準未適合・解体もせず)引き渡した(2023年以前の契約)
今やるべきチェックリスト
まず以下の5点を確認しましょう。
相続登記が完了しているか確認する
被相続人が亡くなる直前まで一人暮らしだったか確認する
建物の建築年を確認する(登記簿謄本・登記事項証明書)
相続開始から何年経つか計算し、期限を把握する
不動産会社に査定を依頼し売却価格の見通しを確認する
税理士に相談し、特例の適用対象かどうか確認する
実際のケース
空き家の3,000万円特別控除を活用できるかどうかで、実家売却後の税負担が大きく変わる場合があります。ここでは、特例を活用できたケースや、制度を知らずに節税の機会を逃したケースを紹介します。
相続後すぐに売却し特例を活用したケース
父が一人暮らしで2022年に亡くなったAさん。実家は築50年の木造一戸建て。不動産会社に相談したところ「解体して更地売却が現実的」とアドバイスを受け、解体後に売却。2025年12月末までが特例の期限と確認したうえで、2025年10月に売却を完了。売却益のうち3,000万円が控除され、税負担をゼロにできました。
制度を知らずに売却したケース
母が亡くなった後、特例の存在を知らないまま相続した実家を売却したBさん。確定申告の際に税理士から「空き家特例が使えたかもしれません」と指摘を受けましたが、申告後の適用は困難でした。数百万円単位の節税機会を逃してしまい、相続した実家を売る前に専門家へ事前相談することの重要性を痛感したとのことでした。
老人ホーム入居後の実家を売却したケース
母が要介護認定を受けて老人ホームに入居し、その後亡くなったCさんのケース。入居後に実家は誰も住んでいない状態が続いていました。税理士に相談した結果、要件を満たすことが確認でき特例を適用。節税効果で実質的な手取りが大幅に増えました。
このケースならどうする?
空き家の3,000万円特別控除を利用できるかは、相続時期や実家の利用状況、売却予定によって異なります。特に適用期限があるため、早めに要件を確認して売却の方針を整理することが大切です。次の表を参考に、ご自身の状況に合った対応を確認してみましょう。
| 状況 | おすすめの対応 |
|---|---|
| 相続直後 | 特例の対象要件を確認する |
| 誰も住まない実家がある | 早めに売却を検討(3年以内が重要) |
| 老人ホーム入居後の実家 | 税理士に要件を確認する |
| 空き家を保有中 | 期限(相続から3年目の年末)を確認 |
| 相続登記が未完了 | 登記完了を最優先にする |
| 売却予定がある | 事前に税理士・不動産会社に相談 |
よくある質問
空き家特例は誰でも使えますか?
使えません。「昭和56年5月31日以前の建築」「被相続人が一人暮らしだった」「相続後に居住・賃貸していない」「相続から3年以内の年末までに売却」「売却価格1億円以下」など複数の要件をすべて満たす必要があります。まず税理士や不動産会社に相談して確認してください。
親が老人ホームに入っていた場合も対象ですか?
条件を満たせば対象です。要介護認定等を受けて老人ホームに入居しており、入居後にその家を貸したり他の人が住んだりしていなければ、対象になる可能性があります。詳細な要件は税理士に確認することをおすすめします。
相続した実家を賃貸に出していた場合はどうなりますか?
賃貸に出した時点で特例の対象外となります。「相続から売却まで空き家であり続ける」ことが条件の一つです。
兄弟で相続した場合も利用できますか?
利用できます。全員が要件を満たせば、それぞれが控除を受けることができます。ただし、相続人が3人以上の場合は1人あたりの控除上限が2,000万円に下がります。
税金がゼロになっても確定申告は必要ですか?
必要です。この特例は「申告することで適用される」制度です。控除の結果として税金がゼロになる場合でも、必ず確定申告を行い、自治体からの「被相続人居住用家屋等確認書」を添付する必要があります。申告を忘れると特例が適用されません。
まとめ:売却前に必ず確認すべき制度
空き家特例(3000万円控除)は、要件を満たせば数百万円以上の節税につながる可能性がある非常に強力な制度です。ただし要件が多く、期限(相続から3年目の年末)を過ぎると利用できなくなります。
相続した実家を売る予定がある方は、売却を決める前に税理士・不動産会社に相談し、特例の適用対象かどうかを必ず確認してください。

