親の施設入居や相続をきっかけに「実家を売るべきか、それとも残すべきか」と悩んでいる方は少なくありません。思い出の詰まった実家だからこそ簡単には決められず、維持費の不安、将来住む可能性、家族間の意見の違いが重なって判断が先送りになりがちです。
この記事では、実家を売るか残すかを後悔なく決めるための判断基準を具体的な数字やケースを交えてわかりやすく解説します。
この記事の結論
「将来住む予定があるか」「維持管理が続けられるか」「資産価値があるか」の3点で判断できます。住む予定がなく、管理も難しい場合は売却を検討するケースがほとんどです。
なぜ実家を売るか残すかで悩むのか
実家を売るか残すかで迷うのは、決して珍しいことではありません。感情的な問題だけでなく、将来のライフプランや家族との話し合い、不動産の価値が分からないことなど、さまざまな要因が重なって判断が難しくなります。まずは、多くの人が悩む代表的な理由を見ていきましょう。
思い出があり手放しづらい
幼少期を過ごした家、親と食卓を囲んだ空間——実家は単なる「不動産」ではなく、家族の歴史そのものです。「売ってしまったら取り戻せない」という気持ちは自然であり、感情的なブレーキがかかるのは当然のことです。
将来使う可能性がある
「定年後に戻るかもしれない」「子どもが地元に帰ってくるかもしれない」といった漠然とした可能性が判断を鈍らせます。ただし「かもしれない」という不確かな予定のために、年間数十万円の維持費を払い続けることが本当に合理的かどうかは、冷静に検討する必要があります。
家族間で意見が分かれる
「早く売って楽になりたい」という子世代と「残してほしい」という他の兄弟や親の気持ちが対立するケースは珍しくありません。不動産は現金と違って物理的に分割できないため、相続人が複数いる場合は全員の合意が必要になり、調整が難航することがあります。
不動産価値が分からない
「古い家だから売れないだろう」と思い込んで判断を止めてしまう方も多くいます。しかし実際には立地や土地の広さによって意外な価値がつくことがあり、査定を受けてから判断することが重要です。
判断を先送りするとどうなるのか
「まだ決めなくても大丈夫」と判断を先送りすると、実家は時間とともに価値や選択肢を失っていきます。維持費の負担が続くだけでなく、建物の老朽化や管理の手間、将来的な売却の難しさなど、さまざまなリスクが積み重なるため注意が必要です。
維持費がかかり続ける
空き家になっても、以下のコストは毎年発生し続けます。30坪程度の一戸建てで年間20〜40万円以上かかるケースも多く、10年放置すれば200〜400万円以上の維持コストが発生します。
建物の老朽化が進む
人が住まない家は換気・掃除・排水が止まるため、通常より早く劣化します。カビ・腐食・害虫の侵入・雨漏りの進行などが起こりやすく、修繕費が膨らむ悪循環に陥ります。放置年数が長いほど売却価格は下がるという現実を忘れてはいけません。
空き家管理の負担が増える
遠方に住んでいる場合、定期的な見回りだけでも交通費と時間のコストがかかります。近隣から「雑草が越境している」「屋根の一部が落ちそう」といったクレームが入るケースもあり、精神的な負担も積み重なっていきます。
売却しにくくなる可能性がある
行政から「特定空家」や「管理不全空き家」に指定されると、固定資産税の住宅用地特例が解除されて税額が最大6倍になります。また建物の劣化が進むほど買い手は減り、価格も下がります。動くなら早い方が選択肢が広いというのが不動産の基本です。
実家を「売る」メリット・デメリット
実家を残すことには、将来の選択肢を確保できる安心感がある一方で、維持費や管理の負担も伴います。大切なのは「残すこと自体」が目的になるのではなく、自分や家族にとって本当に活用する予定があるかを基準に判断することです。
売るメリット
-
【維持費がゼロになる】
固定資産税・保険料・管理費から完全に解放される -
【まとまった現金が入る】
親の施設費用や老後の生活資金に充てられる -
【管理の手間から解放される】
遠方在住でも心理的な負担がなくなる -
【相続トラブルを防げる】
現金化しておけば相続人間で公平に分けやすい
すでに空き家になっていたり、管理が難しい人は、今後の維持費を加味して売却がおすすめです。
売るデメリット
-
【元には戻せない】
売却後に「やっぱり残せばよかった」と思っても取り返しがつかない -
【将来住む選択肢がなくなる】
退職後に地元へ戻る計画があった場合は要検討 -
【仲介手数料などの費用が発生する】
売却価格×3%+6万円(税別)が目安
実家を「残す」メリット・デメリット
実家を残すという選択には、「思い出を守れる」「将来も活用できる」といったメリットがあります。一方で、維持費や管理の負担は所有している限り続くため、感情だけで判断すると後悔するケースも少なくありません。メリット・デメリットを比較したうえで、自分たちの状況に合っているか確認しましょう。
残すメリット
-
【将来住む選択肢を残せる】
退職後・子どもの帰省時など活用の可能性が残る -
【家族の拠点になる】
お盆・正月などに集まれる場所として機能する -
【焦って決断しなくてよい】
売却タイミングを自分たちで選べる
親が施設から戻る可能性があったり、3〜5年以内に自分または子どもが住む具体的な計画がある方は残す選択がおすすめです。
売るデメリット
-
【維持費がかかり続ける】
年間20〜40万円以上のコストが継続 -
【管理負担が続く】
特定の家族(多くは近居の長男・長女)に負担が集中しがち -
【老朽化リスクがある】
放置期間が長いほど資産価値が下落する
判断する際に確認したい5つのポイント
実家を売るか残すかは、感情だけで決めると後悔につながることがあります。将来の活用予定や家族の意向、維持費、建物の状態などを一つずつ整理することで、自分たちに合った選択が見えやすくなります。判断する前に、次の5つのポイントを確認してみましょう。
① 将来住む予定は「具体的」にあるか
「いつか住むかもしれない」という曖昧な可能性のためだけに実家を維持し続けるのは、コスト的にリスクが高い選択です。「誰が」「いつ頃」「どんな理由で」住む予定なのかを具体的に書き出してみることで、判断が明確になります。5年以内に具体的な計画がない場合は、売却を優先的に検討する方が合理的です。
② 相続人全員の意向は一致しているか
実家の売却には相続人全員の同意が必要です。兄弟の一人でも反対すれば売却が止まります。感情的な対立を避けるために、年間維持費・売却査定額・管理の手間という客観的な数字を共有したうえで話し合いの場を設けることが重要です。意見がまとまらない場合は司法書士や弁護士などの第三者を交えることも有効です。
③ 年間維持費はいくらかかるか
「残す」という選択をする場合でも、年間コストを正確に把握しておく必要があります。固定資産税の納税通知書を確認し、保険料・管理費・修繕の予備費を合計して「1年間で実際にいくらかかるか」を数字で出してみましょう。10年間の合計維持費と売却査定額を比較すると、どちらが経済的に合理的かが見えてきます。
④ 建物の老朽化はどの程度進んでいるか
1981年以前に建てられた建物は旧耐震基準で、買い手がつきにくい傾向があります。また雨漏り・シロアリ被害・基礎のひび割れなどがある場合は、修繕費がかさむだけでなく売却価格にも大きく影響します。現地で専門家(ホームインスペクター)に建物状態を診断してもらうと、残すべきか売るべきかの判断材料になります。
⑤ 売却した場合の価格と税金はいくらか
「いくらで売れるか」を把握せずに判断するのは危険です。不動産会社3社以上に無料査定を依頼して相場を把握しましょう。また売却時には**空き家特例(3,000万円控除)**が使える場合があります。この特例は一定の要件を満たした相続した空き家を売却した際に、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度で、適用期限は2027年12月31日までです。期限前に動くことで大きな節税になる可能性があります。
実際に判断したケース
実家を売るか残すかの正解は、家族構成や将来の予定、住まいの状況によって異なります。実際には、維持費や管理の負担、将来の活用予定などを総合的に考えて判断している方がほとんどです。ここでは、実家じまいを経験した代表的なケースを紹介します。
親が施設へ入居
売却
70代の母親が介護施設へ入居することになったAさん(50代)のケースです。実家は築35年の戸建て。「親が戻るかもしれない」と迷いながらも、維持費が月3〜4万円かかり続けていることを家族で確認し、売却を決断。不動産会社3社に査定を依頼したところ、買取と仲介で100万円以上の差が出たため仲介を選択。家財整理から売却完了まで約8ヶ月かかりましたが、維持費の負担から解放されました。
相続したが遠方在住だった
相続
売却
父親が亡くなりBさん(40代・東京在住)が実家を相続したケース。兄弟は全員遠方在住で、管理を担う人間がいませんでした。「残したい気持ちはあったが、年間の維持費と管理の現実を考えると難しい」と判断。空き家特例の適用期限も意識して早期に売却を決断。相続登記を完了させた後、現状渡しで売却に成功しました。
将来子どもが住む予定だった
管理継続
親が施設に入居したCさん(50代)のケース。長男(20代)が「数年後に地元に戻って住みたい」という明確な希望を持っていたため、管理継続を選択。その間は定期的に換気・清掃を行い、修繕が必要な箇所は早めに対処することで建物の状態を維持。3年後に長男が実際に住み始め、実家を有効活用できました。
このケースならどうする?
| 状況 | おすすめの対応 |
|---|---|
| 親が施設へ入居した | 早めに売却査定を受けて維持費と比較する |
| 相続後に空き家になっている | 売却優先(空き家特例の期限も確認) |
| 将来住む具体的な計画がある | 管理継続(期限を決めて定期的に見直す) |
| 子どもが利用予定 | 管理継続(ただし年間コストを全員で共有) |
| 遠方で管理できない | 売却推奨(管理リスクが高い) |
| 築50年以上で老朽化が著しい | 売却または解体後土地売却を検討 |
よくある質問
実家はすぐ売った方がよいですか?
「すぐ売るべき」とは一概には言えませんが、住む予定がなく管理が難しい場合は、早く動くほど選択肢が広がります。建物は時間の経過とともに劣化し、売却価格も下がります。また相続した空き家の売却に使える「空き家3,000万円控除」は2027年12月31日までの期限付き特例です。「まだ決めていない」という方こそ、まず無料査定だけでも受けておくことをお勧めします。
残しておくとどれくらい費用がかかりますか?
30坪程度の一戸建てを想定した場合、年間の目安は以下の通りです。
- 固固定資産税:5〜20万円(エリア・評価額による)
- 火災保険料:3〜8万円
- 管理・清掃・草刈り:3〜10万円
- 突発的な修繕費:数万〜数十万円(随時)
合計で年間20〜40万円以上になるケースが多く、10年間で200〜400万円以上になります。「残す」という選択をする場合は、この維持コストを家族で分担する仕組みを事前に決めておくことが重要です。
・固定資産税:5〜20万円(エリア・評価額による)
・火災保険料:3〜8万円
・管理・清掃・草刈り:3〜10万円
・突発的な修繕費:数万〜数十万円(随時)
合計で年間20〜40万円以上になるケースが多く、10年間で200〜400万円以上になります。「残す」という選択をする場合は、この維持コストを家族で分担する仕組みを事前に決めておくことが重要です。
相続前でも準備できますか?
できます。むしろ親が元気なうちに話し合いを始めることが、最もコストを抑えてスムーズに進める方法です。親の意思を確認しながら片付けを少しずつ進めることができ、いざという時の負担を大きく減らせます。
兄弟で意見が違う場合はどうすればいいですか?
感情論にならないよう、「年間維持費」「不動産査定額」「10年間の総コスト比較」など客観的なデータを全員で共有することが最初のステップです。それでも意見がまとまらない場合は、以下の方法を検討してください。
- 司法書士・弁護士への相談:法的観点から整理してもらえる
- 不動産会社を交えた説明会:プロから市場価値を説明してもらうと感情が入りにくい
- 遺産分割調停:家庭裁判所で第三者が調整に入る(最終手段)
状況によって大きく異なるため、まずは専門家への相談と複数社への見積もり取得をおすすめします。
まとめ:感情と数字、両方で判断しよう
実家を売るか残すかは、感情だけでも数字だけでも決められない問題です。大切なのは、思い出への敬意を持ちながらも、現実的なコストとリスクを正面から見ることです。
判断の3つの軸を再確認
- 将来住む予定が「具体的」にあるか(5年以内に誰が・いつ住むかが明確か)
- 維持管理が「無理なく」続けられるか(費用・時間・手間を担える人がいるか)
- 売却した場合の価値が把握できているか(複数社の査定で相場を確認しているか)
この3点が整理できれば、「売る」か「残す」かの答えは自然と見えてきます。まだ迷っている方は、まず不動産査定を受けることが最初の一歩です。査定を受けたからといって必ず売らなければいけないわけではありません。「いくらで売れるか」を知ることが、後悔しない判断への近道です。

